レコード会社視点から考えれば、答えは見えてくる

メジャーデビューのイメージ図

インディーデビュー、配信デビュー、YouTuberデビュー。
歌手を目指す人にとって、単なるデビューなら文字通り誰でもできる時代です。最近ではむしろ、デビューなんてものの定義自体が古い概念なのかもしれませんね。

ところで、もしあなたの目指すデビューが「メジャー」にフォーカスしているとしたら、その根本的条件って何だと思います?

「歌が上手い?」「ルックスが良い?」「曲が良い?」「ライブパフォーマンスが良い?」
確かにどれも必要です。
ただ、それらはあくまで前提となる要素であり、条件ではない。

では、何か?
メジャーデビューをかなえる、ただ一つの根本条件、それは・・・

ファンの数を証明する

以上。

「メジャー」イコール「多くの人や組織が携わる商業音楽ビジネス」と考えると、あなたの作品やパフォーマンス、またあなたの存在自体は、売れるものでなければなりません。
レコード会社の土俵に乗る以上、あなたは商品。その定義においては、あなたの音楽が商売として成り立つことを、権利者であるあなたが自ら証明する必要があります。

ニーズがなければ、メーカー(レコード会社)はあなた(商品)を取り扱う理由がない、という事実。その当たり前のことに気付けるか?
ここではメジャーデビューの方法論ではなく、考え方のお話をいたします。

本記事を読むべき人
  • メジャーデビューを目指したい人
  • レコード会社が欲しがる歌手は、どうあるべきか知りたい人

メジャーデビューを目指すための視点

メジャーデビューに必要なファンの数

メジャーに行きたきゃ、ファンの数を証明せよ

歌手オーディションなどで実際にお会いする方々には、今も昔も、そのようにズバっと、お答え差し上げています。

かつて私はレコード会社側の人間でしたが、門を叩く志望者たちに当時からそう言い続けてきました。
私自身、上司や先輩たちから同じように指導されてきましたし、アーティストを抱える事務所側の人間となった今も、逆にメーカーから真っ先にそれを求められます。

根本的に、音楽ビジネスは、即ち「ファンビジネス」だからです。

レコード会社を動かす三段階の考察

  1. ファンがいるから、あなたの価値を証明できる

  2. 価値があるから、売れる根拠を見いだせる

  3. 売れる根拠があるから、大人たちは動く

レコード会社を動かす論理はシンプル。
上記の3つの段階に沿って、ファンの数を証明し、その価値をもって根拠を示せばよいのです。

ファンの数、どのくらい証明できればスタートラインに立てますか?
はい、最低3000人から5000人くらいです。

ズバッ!!
なぜこの程度のファンの数を証明できないと、メジャーは動いてくれないのでしょうか?
下記は全国にある主要ホールのキャパシティーです一覧。
レコード会社の人たちはこのような規模の会場を、全国かつ継続的に埋めてビジネスをするからです。

  • 東京ドーム/京セラドーム(大阪):55000人
  • バンテリンドーム(名古屋)/札幌ドーム:50000人
  • 福岡PayPayドーム:38000人
  • さいたまスーパーアリーナ: 37000人
  • 横浜アリーナ: 17000人
  • 日本武道館: 14000人
  • 代々木体育館: 13000人
  • 幕張イベントホール: 9000人

全国に散らばるファン達の1/10が最寄りのライブ会場に足を運ぶ人たちだったとして、上記を埋めるとしたら?
「ドームでやりましょう」なんていう観点で考えると、潜在的なファン母体は50万人とか、それ以上の規模が存在せねば成り立たない。

私も歌手オーディションでは、「あなたは今どのくらいのファンがいますか?」と聞くことが多い。
しかし、スタート時点で「ファン?うーん、10人くらいですかね~」という自称アーティストが、どんなに歌の才能ある人物だったとしても、どうやって数万人の動員を描けるのか?
レコード会社の人たちが、たとえ神さまだったとしても、ムリだと思います(笑)

スタート時点で最低3000~5000人というのは、それでも激アマな数字なのだ、とご認識を。

レコード会社にソロバンをはじかせる

「ワンマンライブをすれば、毎回7~800人くらいは埋まる」
このくらいの状況であれば、数社からオファーがあるかもしれません。

これは、「日本武道館: 14000人」の、1/20程度。
7~800人と言えば、「クラブクアトロ(渋谷、梅田、福岡)」あたりのキャパシティー。
できれば、1500人あたりの「TSUTAYA O-EAST」や「なんばHatch」あたりは、インディーの段階で成功させておきたいところ。

「毎回1000人来るってことは、潜在的には10000人くらいはマーケットがあるだろう、ならCDを10000枚作ろう」と計算できるから。
そう、レコード会社にソロバンをはじかせることができなければ、メジャーデビューなど夢のまた夢なのです。

もしあなたが「レコード会社のオーナー社長だったら」と想像してみてください。

目の前にいる、「無名」かつ「赤の他人」に対し、例えば今まで一生懸命貯金してきた4,000万円を、その人に全額投資することができるか?

時給1,000円で4万時間(約20年間)働かなきゃ得られない大金です(しかも全額貯金ベースで)。

大きなリスクがあるのだから、あなたをフックアップするための根拠が欲しいのは当然。
相手の立場になって考えてみれば、求めるものが見えてきます。
数字の根拠、それこそ、あなたがレコード会社から要求されるものなのです。

音楽ビジネスは、即ち「ファンビジネス」

メジャーデビューとは、他人(業界)の土俵に上げさせていただくこと。それを自ら希望しているわけなので、事務所とかレコード会社とかプロデューサーから見た観点で、「開発しやすく」「売りやすい」というアーティストであることが求められます。

なぜなら音楽というものは、収益を考えた時点でビジネスだから。
ファンがお金を払ってでも、あなたに纏わる何かを手に入れたい、近くにいたい。
だからCDを持っていたい、ライブに行きたい、グッズを手に入れたい。

その土俵に望んで飛び込むのであれば、「ファンづくり」を前提に全ての行動を結び付けましょう。

ファンとはマーケット
マーケットがなければ、どんなに革新的な発明もビジネスにはならない。
「カッコいい消火器」を開発したとしても、消火器が欲しい人がいなければ、売れないのです。

マーケットが存在し、ニーズが明確である、だから投資する価値がある。

なぜそこまで慎重に考えなければならないのかというと、一人の歌手をメジャーで売り出すのに、とてもお金がかかるからです。

例えば、事務所は歌手を育てたり価値を創ったりすることで、数百万~数千万円かかります。メジャーアーティストがアリーナや武道館でライブをするのに、レコード会社は数千万円~数億円の資金を投下します。

そのお金は、「あなた以外の誰か」が額に汗水たらし、死に物狂いで作った種銭。
それをもって、社運をかけ、あなたに投資するわけです。

当然、数百万、数千万、数億の価値が、あなたにあるか・・・大人たちはシビアに判断することになる。
その価値があるから「あなたでなければならない理由」になるし、その価値とは「ファンの数」というのが最も判りやすい。

ゼロからいきなりメジャーデビューを目指せる例外

メジャーデビューしたバンドミュージシャン

ちなみに「ファンが一人もいないのにデビューできる可能性」も、あるにはあります。
メジャーデビューというと、みんな、こっちのイメージの方が強いのかもしれませんが。

それは何か?

今まさに動き出そうとしている某プロジェクトがどこかで存在し、「たまたま」タイミングよくバッチリ合う人材が、「たまたま」あなたであった場合など。

例えば、来春デビューが決まっている、大手広告代理店主導でプロデュースされたアイドルグループ候補の一人とか。

歌良し、ルックス良し、パフォーマンス良し、これらは前提中の前提。
でも「バッチリ合う」のだから要件も厳しいし、99.9%以上の人たちが即ち適合するものではない。
正直、海に手を突っ込んで針を拾い上げるような話ですよね。

まさにドリーム。しかし夢は夢です。
大人主導でプロデュース企画がバンバン浮上していたのは、2000年代初頭まで、とご認識を。
メジャーデビューを取り巻く環境に関しては、時代はとうの昔に変わっていたのです。

「例外」に命運をかけることに向いている志望者

ファンの数ゼロから、いきなりメジャーデビューを目指したい方へ

まず前提として、事務所に所属しておきましょう(毎日空を見て過ごしていても、チャンスは天から降ってこないから)。
その上で、下記のような方は狙ってみても良いかもしれません。

  • あらゆる方針をプロデュースやマネジメント側に全て委ねたい(委ねられる)人
    • 他人の計画にたまたま適合することを、あなた自身が望んでいる形なので、基本的に自らの主張を通すことはできないことを覚悟してください。
  • 20代中盤までは辛抱強くチャンスを待ち、それ以降はきっぱり諦められる人
    • ごく例外を除き、音楽のみならず芸能プロジェクトにおけるタレント発掘ターゲットは、事実ベースで10代~20代前半までです。
  • スキル向上や、自分磨きを自己投資で継続できる人
    • これは、歌手を目指す全ての人にとってマストではあります。ただ、不意に訪れたチャンスをモノにするため、常に準備万端でいれることが肝要です。

要するに、「10代」で、かつ「大人たちの方針を従順に受け入れ」、「才能に長けている人」であれば、メジャーデビューの可能性はあります。

しかしながら…

いまメジャーデビューを目指している皆さんにおかれまして、大半はその要件には満たないはずと思うのですが、いかがでしょう?

だから歌手志望者にとって、「主体的にファンを確立させるアクション」はマストなのです。
選ばれる事を待つのではなく、「ファンの数」を盾に「あなたがレコード会社を選ぶ」、という能動的な状況を目指したいですね。

自らファンをつくれないのは、ただの言い訳

メジャーデビューの歌手レコーディング

大半の歌手志望者にとって、「ファンの数ゼロからメジャーデビューを目指せる可能性」に自分の命運を委ねるのは、私は危険だと考えています。
そんな夢見る時期があっても良いですが、本気でメジャーデビューを目指すなら一日も早く現実に向き合いましょう。

いま歌手志望者は、平等に発信プラットフォームを持っている

自らファンをつくるべき理由は二つ。

  1. メジャーレコード会社主導のプロジェクトが多かった時代は、もはや2000年代初頭までの話だから(乗っかれるチャンス自体がほとんど皆無)。
  2. 今の時代、個人が自ら無料で発信して、ファンをつくれる時代だから(あなたにも平等にチャンスがあるわけですし)。

特に2の方は、「SNSやYouTubeでインフルエンサーになる」「ライブ配信でミュージック・ライバーになる」など、近年は多くの選択肢があります。2010年以降、ヒットしたアーティストたちは、こういった活動から足がかりを作ってきた事例も多い。

発信プラットフォームは、トレンドが目まぐるしく変わりますので、ついていけない方も多いかもしれません。
しかしそれらを活用したアプローチは、あなたのスマホやPCから、誰でも平等に、(大抵は)無料で取り組めるものです。

「ツールは全員の手元に等しくある」のであれば、自分が上手くいかないことを他人のせいにはできません。「私はできません」は言い訳であり、あなたが選ばれる理由を自ら放棄することになります。
やるかやらないか、やれるようになるのか否か、選択はあなた次第です。

いま歌手志望者は、ファンの数を証明しやすい

そしてもう一つ重要な点。
現代の発信プラットフォームは、あなたがどのくらい支持されているのか、客観的に数字で表れるということです。
チャンネル登録者数、フォロー数、再生数など、大きな数字を獲得できていれば、少なくともファンの数として提示できる「材料」にはなることでしょう。

歌手志望者は、いまだかつてないほど、ファンの数を証明しやすい時代です。自分が世の中から支持されている証拠を、胸を張って机の上に叩き出しましょう。

もちろん、全く別のアプローチでも構いません。
昔ながらのやり方で、ライブハウス活動や路上ライブで注目を集めてもよいです(私はお勧めしませんが)。
いずれにせよ、ある程度のファンをつくり、把握し、数字で証明しにいくことが、メジャーデビューをしたいあなたの第一歩。それは、あなたなりの方法論でもOKです。

しかしファンをつくること自体から逃げている方は、そもそも向いてないので、メジャーデビューはあきらめてください。
「目指しているはずのあなた自身」が自らのファンをつくれないのに、いったい誰があなたのファンを連れてきてくれるのでしょうか?

今回のまとめ
  • メジャーデビューのために必要なのはファンを作ること、その数を証明すること。
  • 「あなたでなければならない理由」を根拠をもって示すこと。
  • 今は、いくらでも自らファンをつくれる時代。

少し本稿と論点はずれますが、最後に付け加えておきます。
下記のような質問を受けたことがありました。

3000人から5000人のファンがいるのならメジャーに行く必要もないんじゃないか?
全くおっしゃる通りだと思います。

そのくらいファンがいれば、「求められる中で」継続してワンマンライブ、及びツアーが行えるでしょう。
音楽活動を継続していく(音楽を中心に生活していく)ことは可能、と言える水準かも知れません。
私自身、「今のご時世、メジャーを目指すメリットはあまりない」と思っていますしね。

ただ、どのフィードで活動していくにせよ(目指すにせよ)、このくらいのファンがいなければ、未来は作れないのは同じ。
闇雲にライブをしていっても、漫然と曲作っても、根拠なしにオーディション巡りしてても(たとえ合格したとしても)、絶対に目指す形にはならないこと、これは断言します。

ゼロベースの方へ

なお、今回は「メジャーデビューの条件」が焦点であり、レコード会社へのベクトルの話です。
「今、ファンがいない」からといって、何も進めないわけではないことを誤解なきよう。その戦略を一緒に考えるのが、マネジメントオフィス(事務所)です。
「今はまだファンといえるファンはいないけど、一緒に道を模索したい、相談したい」
そんな方は、ミュージックバンカーの歌手オーディションから会いに来てください。