なんで事務所に手数料入れなきゃならないの?

事務所の存在意義のイメージ

何のために事務所に所属しなければならないのか?

所属契約のスタイルにも様々なパターンがありますが、こと専属マネジメント契約を締結すると、例え自分で取ってきた仕事も、事務所通しになります。ギャラからは当然マネジメント手数料が抜かれることになりますよね。
内緒で案件を請け負うと違反です。これを「直」とか「闇営業」とか言います。
私がとってきた仕事なのに、なんで会社に手数料入れなきゃならないの?
結論から言います。

あなたとマネジメント契約している事務所には、あなたに対してリスクがあるからです!

本記事を読むべき人
  • 事務所に所属する意味とメリットを知りたい方
  • 事務所や側の抱えるリスクを理解したい方

事務所の存在意義

事務所に入る目的
  1. 仕事を管理してもらう
  2. 身元保証を得る

仕事を管理してもらう(タレントイメージ)

1のポイントについては、前回の所属事務所とマネジメントで言及したお話の通りです。
今回のテーマに付随して深堀するとすれば、「タレントイメージ」というキーワードが上がります。

事務所は仕事を管理しますが、「案件」はもちろん、「タレント自身」の管理という要素も含まれます。
所属契約の中でも、ことマネジメント契約においては、タレントは自ら仕事を選べません。自ら案件を勝手に受注して、履行するのはもっての他です。
なぜなら事務所は、戦略の中で当該タレントのイメージをつくり、そのイメージを掲げて売り込むからです。

  • 例えば極端な例。

清楚派のアイドルとして、丹念に育てているアイドルがいるとします。
その彼女が、事務所に内緒でアダルトビデオに出演し、それが世間にばれたらどうでしょう?
本人はもとより、所属事務所も、大変なバッシングを受けます。
事務所の立場としては「知らなかった」が事実ですが、それでは世間は納得しないでしょう。

  • もう一つ、これは実際の有名な事件。

2019年に、吉本興業の闇営業問題が取り沙汰されましたね。
芸人たちが反社会的勢力との付き合いがあったとバレたことから大変なことになりました。
イメージを商売にする芸能界なので、タレントイメージ的には大変痛手です。
事務所の対応にも批判が集まりましたが、そもそも発端は芸人たちが事務所に黙って「直」をしたからです。
「反社との関わりについて知らなかった」はタレント側の自業自得。この背景において、吉本興業は被害者である、というのが私の見解です。
仮に芸人たちがルールを守っていれば、マネジメント責任として事務所が100%責任を負うべき話でした。
あなたは事務所に束縛されるかもしれないが、事務所はあなたと契約することでリスクがあるということ。

身元保証を得る

事務所に入る目的の二つめは、身元保証を得ることで仕事を形にしやすい、ということです。
小さな個人案件はともかく、ある程度の案件になってくると、クライアントやスポンサーの方が「所属していないタレント」を嫌がります。
なぜかというと身元保証が無いと信用できないからです。

例えば10社80人のスタッフが集まる収録現場にて、あなたが撮影されるとします。
プロジェクト予算は数千万円の規模。
そこでフリーのタレントが、なんらかの理由でドタキャンした場合、一体誰が責任を取るのでしょうか?
あるいは起用してみたは良いが、蓋を開けてみれば本人の技量不足で使い物にならなかった、というケース。
タレントがどこかに所属していれば、クライアントはその事務所に責任追及することができます。
一方、タレントがフリーの状態であれば、振り上げた拳を下ろせず、白羽の矢は自ずとキャスティング担当者に立つことでしょう。
そんな危険を冒せないから、クライアントは極力タレント本人ではなく、事務所にオファーを出したいのです。
事務所はリスクを引き受けるから、マネジメント手数料を抜くわけです。

ある程度仕事が回ってくるようになったら、事務所に入っておいた方が大きな案件を受けやすい、だから事務所に入るメリットがあるのだと心得ましょう。
逆に業界から個人として大きな信頼を勝ち取っている人、かつセルフマネジメントが得意な人は、無理に事務所に入る必要はないとも言えます。

新しい所属契約のカタチ

下記が当てはまる方には、新たな契約のカタチをお勧めします。
それは専属エージェント契約です。

  1. 事務所に所属したい
  2. でも自分で取ってきた仕事は自分で管理したい
  3. その代わりマネジメントリスクは自分で負う

マネジメント契約とエージェント契約の違いは、いつか詳しくコラムにしますが、とりあえず概要だけ。

スケジュール管理、法務、税務など、あらゆるマネジメント責任は自ら持ち、案件受注の窓口を事務所に代理する専属的契約。
案件が成立した暁には、タレントが事務所に対して報酬や手数料を支払うというのが表向きのカタチになります(ただし、実際の経理処理はその限りではない)。
エージェント契約では事務所はマネジメントをしないので、タレント自身の自由度や主体性は上がります。
その代わり守ってもらえない、という理解でよろしいかと思います。

ちなみに。
所属契約を、前提から「こう勘違いしている方」にも、エージェント契約のほうが合っています。

「事務所は私のために営業して仕事をとってくるものだ」

…違う違う(笑)それはニーズがあるタレントが言えること。
所属の在り方が、「専属マネジメント契約」の場合、正解は「タレントは事務所のために仕事をする」です。
事務所は事務所のためにあなたを売り出すのであって、あなたは事務所の土俵で活動をすることを望んで契約を巻いている。だからあなたは守られる。

マネジメントリスク、タレントはあまり実感できない

タレントはしばらく所属状態でいると、次第にマネジメント手数料を抜かれることや、あれこれ行動が制約されることに不満を感じてくるパターンが多いです。

なぜそうなるのかというと、多くのタレントがマネジメントの意味を理解していないからです。
「私はトラブル起こしたことはない、だからマネジメントリスクって言われても…」
でもそう思えるのは、イメージ保守にしても、身元保証にしても、起こり得るトラブルを事務所が頑張って未然に防いでいるから、かも知れませんよ?
だからタレントにとっては、「起こっていない要素」に対する対価や制約に違和感が生じやすい。マネジメントリスクをあまり実感できないのは無理もないことです。

でも、エージェント契約にしたり、フリーで活動したりすれば、マネジメントの重要性は身に染みるでしょう。
もし身に染みることがないのであれば、そもそもマネジメントが必要なほどあなたにバリューはなかった、という証明になります。

今回のまとめ
  • 事務所の存在意義はタレントイメージの保守を含めて仕事を管理してもらうこと
  • また身元保証をしてもらうこと
  • マネジメントリスクを自ら負える人はエージェント契約がおすすめ

ミュージックバンカーの所属タレントは、今のところ、アーティスト(ボーカル)声優ナレーターの三種です。いずれもマネジメントの在り方は話し合いで決める方針。
双方の価値観や状況に応じて、所属スタンスは柔軟に考えましょう。