売れたいのに、なぜ売れるものを作らないのか?

売れる楽曲のイメージ図

シンガーソングライターを目指す歌手志望の皆さま。

「売れる曲」を作りたいですか?「売れない曲」を作りたいですか?

そう問われたら、あなたはどう答えるでしょうか?
よほど捻くれた人を除けば、100%前者に手を挙げることでしょう。

ミュージックバンカーでは歌手(ボーカル)オーディション、または人からの紹介で多くのシンガーソングライターの皆さまとお会いします。

その歳、オリジナル曲のデモを聴かせていただくのですが、感想を求められても「まあ良いと思います」と絞り出すことがほとんど。本音は可もなく不可もなし、という感じ。
なぜ、そこでそのコード進行を選んだのか。果たしてそのメロディーの運びは必然なのだろうか。などと、心中反芻するわけです。

楽曲制作に正解不正解はありません。しかし、自分の楽曲が売れるものでありたくて作るのであれば、最低限「売れるためのポイント」を押さえておかねばならないのです。

そんなポイント、皆が押さえたら全部同じような曲になっちゃうじゃないですか!

これは素人が主張する、あるあるのご回答。

はたして、そうでしょうか?

「売れるにこだわるプロ」であればあるほど、徹底して売れるロジックを作品に落とし込みます

J-POPにおいて売れる楽曲を作るためには、いくつかの重要な法則が存在します。
今回は、そのうち3つを紹介したいと思います。
本記事を読むべき人
  • 売れる楽曲の法則を知りたい人
  • シンガーソングライターや音楽プロデューサー志望者

売れる楽曲のポイントを研究する

楽譜

売れる楽曲づくりのポイントは、「自分は売れたい」と願う全アーティストが、必ず意識しなければならないファクター。

これまで何曲も作ってきたはずの人が、「そのポイントって何ですかぁ?」と今更ながらに質問するなら、「一から出直した方が良い」と答えます。
なぜなら、日本における商業音楽のヒット曲には共通点が多数存在し、そのルールは何十年も普遍的なものだから。

曲作りに取り掛かる前に、まずこれまで「日本で売れた曲たち」を、徹底的に分析し、研究しましょう。
そこには一定の共通点、法則があるはず。それをメソッド化して、制作に反映する。
プロなら当然のアクションです。

3大コード進行を使う

日本の商業音楽シーンでは、サビでこれを使っておけば間違いない、と言われる有名なコード進行のパターンが4つあります。



※ Just The Two of Us進行は「丸サ進行」とも呼ばれます

楽曲例はあり過ぎて・・・挙げるのも大変なので、まず参考動画を見てください。

王道進行

「F⇒G⇒Em⇒Am」

カノン進行

「C⇒G⇒Am⇒Em⇒F⇒C⇒F⇒G」

小室進行

「Am⇒F⇒G⇒C」

Just The Two of Us進行

「FM7⇒E7⇒Am7⇒C7」

え?この曲も?あの曲も?
と誰でも知っている数百曲のヒット曲が「実はコレでした」、を検証する動画です。
逆に言えば、サビでこれらのコード進行を使っていなければ、売れようがない!
…なんて言いすぎでしょうか?
もちろん時代によって、よく使われるパターンに流行りはあります。

時代を遡ると、この4つがトレンド循環しており、この先も流行りは巡ることでしょう。
そう考えると、少し先のヒットを見据えて、どのパターンを意識すべきか…
戦略が見えてくるのではないでしょうか?

とにかくヒット曲を産みたいなら、上記のどれか、またはその派生・応用のコード進行を取り入れる。
そう素直に受け止める態度こそ、プロへの第一歩。

サビの歌詞は「あ」母音で始まる

これは統計的に昔から話題になることですが、サビの頭は「あ」母音で始まるワードでスタートすると、なぜか売れやすい。
そのサビ頭のワードが、即ちタイトルであると、なおGOOD。

往年の定番曲であれば、ZARD「負けないで」、ウルフルズ「バンザイ」、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」、ORANGE RANGE「花」など。
「I LOVE YOU」なんていうタイトルの曲は、世の中に沢山ありますが、やっぱりサビ頭は「あ」が多いのは想像つくと思います。

たぶん、母音の中で「あ」は一番開放される響きになるので、勢いがつくのではないでしょうか。
歌詞を創る際、サビの第1フレーズで迷ったら、「あ」母音の言葉から探してみるのはアリですよね。

いきものがかりの水野良樹さんが、そう意識して制作している話は有名です。いきものがかりのヒット曲を挙げてみましょう。

  • 「“ありがとう”って伝えたくて」(ありがとう)
  • 「会いに会いに会いにいくよ たいせつな君のところへ」(会いにいくよ)
  • 「サヨナラは悲しい言葉じゃない」(YELL)
  • 「帰りたくなったよ 君が待つ街へ」(帰りたくなったよ)
  • 「ダーリン ダーリン 心の扉を 壊してよ」(気まぐれロマンティック)
  • 「さくら ひらひら 舞い降りて落ちて」(SAKURA)
他にもたくさんありますが、明らかに狙って作っているわけです。

シンコペーションを取り入れる

 

シンコペーションとは、強拍と弱拍のパターンを変え、リズムに変化をもたらすこと、と定義されています。

「弱起」とも言い、メロディーが弱拍、すなわち「小節内の第一拍目以外」の拍から始まります。
本来あるべきアクセントよりも前から音が始まる状態であり、「食う」なんて言い方をすることも。
(言葉だけで理解するのは、難しいですね)

とにかくシンコペーションを使うと、グルーブ感が生まれ、スピード感が出て、カッコよくなる、と私はシンプルに認識しています。なんとなく、ジャズっぽい印象を与えるイメージですかね。

実際の音楽ジャンルとしては、クラシック、ポップス、ロックなどの様々な楽曲で使用されています。
映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌「ひまわりの約束」(秦基博)なんて、サビだけで19ものシンコペーションがあるそうです。
他にも、サスケ「青いベンチ」、宇多田ヒカル「Can You Keep A Secret?」、SMAP「世界に一つだけの花」、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」など。

売れている曲のサビ始まりに注目してください。サビ始まりの1拍目に、行儀よく音符が置かれていることは少ないはずです。

後に売れた若き才能も、楽曲研究に余念がなかった

楽曲研究

もう20年近く前になりましょうか。私がレコード会社の中で、新人作曲家の管理責任者を担当していた時代。
某専門学校から発掘してきた、ある作家の卵がいました。
当時彼は、まだ若干20歳の学生。作曲家として大変ポテンシャルを感じたので、即契約して面倒見ることに。

デモ曲を提出する際、「誰のどの曲を参考にして作ったのか」「楽曲の売りポイントはどこか」「どのアーティスト向けに最適な曲なのか」など、自作曲の全てに対して論理的なリポートを添付してくれるような子でした。
ある日彼がこう言ってきました。

歌詞に関して、ヒット曲の法則が見つかったかもしれません!

そこで説明されたのが、サビ頭に「あ母音」の歌詞を持ってくると売れる法則でした。
前述した、いきものがかりの水野さんが、メディアでこれを語る8年前の話です。

その若き才能、後にAKB48の23枚目シングル「風は吹いている」を作曲し、104万6000枚のミリオンセラーを記録します。

名を残すような天才作曲家も、若干20歳の頃から楽曲研究に余念がなかった努力家だったというエピソード。

今回のまとめ
  • 売れる楽曲を作りたいなら、売れるポイントを必ず押さえよう
  • コード進行、歌詞、リズムなど、ヒットには原則がある
  • 天才だって研究の努力に余念なし

当たり前ですが、売れたいなら、売れる法則に則った楽曲づくりをする。
プロであればあるほど、意識しています。
そのプロたちと勝負をしていかなければならない新人が、少なくともプロと同じロジックを持たずして、何故勝てるのか?

他にも、いろいろファクターはありますが、とりあえず、今回挙げた3点だけでも意識して作ってみたらいかがでしょう?

  • 売れる行動をすれば、売れる可能性はある。
  • 売れない行動をすれば、100%売れない。

どちらを選択したいかは、あなた次第です。