だからあなたはプロ歌手になれない

これまで私は、プロを目指す歌手志望の方々やアマチュアの方々のレコーディングを、何百件も担当してきました。
新人ボーカル、SNSシンガー、スクール生、さまざまな人の歌に向き合ってきましたが、その中である“共通点”が見えてきたのです。
実に8割以上の人に共通する「悪い癖」。
それが、しゃくりです。
歌い始めをズリ上げてしまう人。フレーズの途中でいちいち音をすくい上げる人。どちらも、レコーディング現場では苦労するタイプです。ピッチ修正の際には音が不安定で、正しい音に合わせるのがとても大変になります。
とはいえ、本人はその癖に気づいていないことがほとんどです。「しゃくり=表現力」と思い込み、感情的に歌うほど上手く聴こえると勘違いしてしまうのです。
でも、一度プロ歌手の音源をよく聴いてみてください。MISIAさんも宇多田ヒカルさんも、King Gnuの井口さんも、思ったほどしゃくっていません。むしろ、歌い出しから音がピタリと決まっていて、スッと入るように自然です。
癖と表現力(個性)は別物。
なぜ、多くの歌手志望者がしゃくり癖に陥るのか。
そして、なぜそれがプロへの道を遠ざけてしまうのか。
今回は、現場での体験と技術的な視点を交えながら、その真相を丁寧にお伝えします。
- 自分の歌にしゃくり癖があるか不安な人
- 録音すると歌が不安定に聴こえる原因を知りたい人
絶望的にズレる「しゃくり癖」という落とし穴

しゃくり癖は歌唱において、なんとなく上手く聴こえる性質を持つため、本人が自覚しにくい特徴があります。しかし、レコーディングの現場では、ピッチの立ち上がりを濁し、リズムを遅らせ、声の魅力そのものを削ってしまう厄介な症状として扱われます。
ここでは、なぜ多くのアマチュア歌手がしゃくりに頼ってしまうのか、そのメカニズムと心理的背景を、実際の現場での一次体験・データとともに掘り下げていきます。
なぜ“しゃくる”のか:アマチュア歌手の共通構造
歌の現場に長くいると、アマチュアがほぼ共通して抱える“クセの源泉”が少しずつ見えてきます。とくにしゃくり癖は、単なる歌い方の個性ではなく、音程認識の弱さと発声の初動不良が複雑に絡みあった「構造的な問題」です。

しゃくり癖を持つ人のほとんどは、自分がしゃくっているという事実を理解していません。
その無自覚こそが、最も危険なポイント!
そもそもなぜ人は、下から音をすくい上げるのでしょうか。
大きな原因のひとつは、音程のイメージが曖昧で、ジャストの音に自信が持てない状態です。狙った音を頭で描けていないため、歌い出す瞬間にどうしても「探り」が入ります。
結果、ピッチを下から合わせにいく形になり、しゃくりが発生します。また、発声の立ち上がりに時間がかかる「アタックの遅延」も深刻な要因です。喉が鳴る準備が整わないまま声を出すと、最初の音が不安定になり、そこから上に寄せていこうとする動作が発生します。
さらに、しゃくり癖を持つ人は例外なく、歌唱時に喉や首に無意識の力みがあります。スタジオのモニター越しに見ると、肩がわずかに上がっていたり、舌が奥に引っ込んでいたりする。こうした「不要な力」が、声の立ち上がりを邪魔し、“正しい音への着地”を阻害しているのです。
興味深いのは、しゃくり癖を持つ人ほど、カラオケ環境では上手く聴こえるということです。機械のエフェクトや残響に助けられ、粗が目立たないため、友人に「うまいね」と言われる。この小さな成功体験が積み重なり、ここから“歌い手マインド”が醸成されていきます。
しかし、レコーディングという無加工の環境では、しゃくりの悪影響が一気に露呈する。本人は当然ショックを受け、場合によっては歌を辞めてしまうほどの挫折につながるケースもあります。
しゃくりは「個性」ではなく、構造的に生まれた“ズレの積み重ね”です。まずはその正体を理解することが、克服への第一歩になります。
しゃくり癖が引き起こす「音楽的ダメージ」の正体
しゃくりは、単に「癖だから直したほうがいい」というレベルではありません。音楽的観点から見ると、歌の基礎を根っこから揺るがす致命的リスクを抱えています。私がスタジオで最も困るのは、しゃくりがピッチ修正を極端に難しくする点です。
まず、しゃくりが入るとアタック(発声開始)が遅れます。音程を下から探している間、リズムに乗り遅れるのです。特にクリック(メトロノーム)を使った録音では、1/16秒のズレが大きな違和感として浮き彫りになります。音の入りが遅れたままフレーズに突入するため、伴奏との同期が崩れ、歌全体の推進力が失われてしまいます。
次に問題となるのがピッチラインの乱れです。しゃくった波形を解析すると、波形の最初が“下方向の湾曲”になっており、そこから上に向かって弧を描くように上昇しています。この動きがあると、Melodyneなどのツールで修正しようとしても、「どこを正しい音として基準にすべきか」が非常に曖昧になります。アタックが汚れた状態では、プロでも修正が難しいのです。
さらに厄介なのは、しゃくり癖が声質を“ねちっこく”し、透明感を失わせる点です。プロ歌手の楽曲を聴いていただくと分かりますが、意外なほどしゃくりを多用していません。フレーズの入りをストレートに当てることで、音がスッと前に飛び、曲の芯が締まります。しゃくってしまうと、その芯が失われ、歌の印象が重たく、古臭くなるのです。
音楽制作の現場では、癖としてのしゃくりは「味」ではなく「ノイズ」に分類されます。 そして、それが無意識で繰り返されるほど、修復は困難になります。
自覚なき「うまく聴こえる罠」
しゃくり癖の最も深刻な点は、技術的欠陥そのものよりも、本人がそれを“うまさ”だと信じ込んでしまう構造にあります。
これは心理的な罠に近く、長年にわたり私が最も悩まされてきたポイントでもあります。
しゃくりを入れると、声に揺れや表情がついたように聴こえるため、カラオケの場では高確率で「上手いね」と評価されます。特に残響の多い空間(カラオケボックスやライブハウス)は、しゃくり特有の揺れを美化してしまう傾向があるため、本人は「自分には表現力がある」と誤解しやすいのです。ここから「私は歌がうまい」という自己イメージが強固に形成されていきます。
しかし、レコーディングではその幻想が一瞬で崩れます。何も加工されていない自分の声に向き合った瞬間、しゃくり癖がむき出しになり、プロのエンジニアから「このクセ、直さないと厳しいですね」と指摘される。
問題は、ここで初めて「歌がうまい」と「歌がうまく聴こえる」が別物だと理解する点。
しゃくりは後者を過大に演出しますが、前者にはほとんど寄与しません。むしろ、技術的にはマイナス要素のほうが遥かに大きいのです。
このギャップに気付くのが遅れるほど、矯正には時間がかかります。 ボイトレを始めても数年かけて癖を削る必要があり、同時に本人の“良さ”まで削れてしまうリスクがあります。
しゃくり癖は、ただの技術的な誤りではありません。 誤った成功体験が作る“思い込み”が最大の敵なのです。

カラオケで周りから上手いと言われてきた人ほど注意!
「発声の土台」としゃくり癖の深い関係

しゃくり癖は、表面的な歌い方の問題に見えますが、実際にはもっと根の深い発声の土台と密接に結びついています。音程の曖昧さ、呼吸の癖、喉の使い方の誤解など、基礎レベルの問題が複数重なることで、しゃくりが日常化していきます。
ここでは、スタジオで見てきたリアルな事例と発声理論を交えながら、「なぜ基礎の欠陥がしゃくり癖を強化してしまうのか」その核心に迫っていきます。
音を探すクセの正体
しゃくり癖の根源にあるのは、シンプルに言えば「狙った音程を頭の中で明確に描けていないこと」です。現場でも、しゃくり癖が強い人ほど、歌い出し直後のピッチが大きく揺れています。これは、「どの音から始めるべきか」を脳内で十分にイメージできていない証拠です。
歌は、声を出す前からすでに始まっています。プロ歌手は歌い出しの前に、次に鳴らす音程を聴きながら(内耳でイメージしながら)ブレスを取ります。
しかしアマチュアの場合、そのイメージが曖昧で、ブレスと音程イメージが分離してしまっているのです。この状態では、正しい音に当てることが難しく、結果として下から音を探しにいく“しゃくり動作”が発生します。
さらに問題なのは、音を探す動作が積み重なると、脳がそれをデフォルトだと錯覚してしまう点です。いわば、しゃくり癖が脳に固定されるのです。
内耳で音を予測してから歌う習慣が育たないまま、なんとなく音を滑らせて当てるクセだけが強化されていく。本人が「これで当たっている」と錯覚してしまうため、改善のきっかけがほとんど得られません。
また、音程を曖昧に捉える人は、例外なく「音の立ち上がりが弱い」という共通点があります。波形を解析すると、アタックがなめらかすぎて境界が見えず、正確な音の出どころが判別しにくい。これにより、ピッチを安定させる支点が作れず、しゃくりが常態化します。
結局のところ、しゃくり癖を治すには、まず「音を事前に明確に描く耳」を育てる必要があります。音程認識の曖昧さを放置したまま技術練習をしても、改善はほとんど期待できません。
これは長年の現場経験から断言できます。
発声の立ち上がりが遅れる理由
しゃくり癖がある人をよく観察すると、歌い出しの瞬間に喉・首・肩周りがわずかに固まる動きをしていることが分かります。
本人は自覚していませんが、歌う準備をする際に体が過剰に力んでしまい、そのせいで発声の立ち上がりが遅れるのです。この遅延こそが、しゃくり癖の加速装置と言えます。
具体的には、次のような力みが発声初動を邪魔します。
- 舌の根元が奥へ引っ込む
- 首周りが緊張して息の出口が細くなる
- 肩が上がり、胸で息を支えようとする
- 喉仏が上がり、音程が不安定な状態になる
これらの状態では、息と声帯が同時に働かず、声が遅れて出るため、音を下からすくい上げるしゃくり動作が生まれます。つまり、しゃくりとは「発声の遅れを誤魔化す補正動作」でもあるのです。
さらに、多くのアマチュアが採用している胸式呼吸も、しゃくり癖の一因です。
胸式呼吸では、喉の奥を締めて息を止める形になりやすく、その結果、発声時にワンテンポ遅れる現象が起こります。横隔膜を使った腹式呼吸が安定していないと、息の流れが滑らかに始まらず、しゃくりが誘発されます。
私がスタジオで出会った、ある20代の女性シンガーは、胸式呼吸が強すぎて歌い出しのたびに肩がガクッと上がっていました。録音を何テイクしてもアタックが遅れ、ピッチが不安定になる。
改善法として、まずは肩を動かさずに息を吸う練習から始めてもらったところ、数週間でしゃくりが半減し、歌全体が驚くほど安定しました。
しゃくり癖の核心は喉ではありません。 息の流れと発声のタイミングが整っていないことにあるのです。
独学による努力の方向違いがクセを強化する
しゃくり癖が深刻化する背景には、もうひとつ重要な問題があります。
それが独学の限界です。これは私が長年痛感してきたテーマでもあり、最も伝えたいポイントのひとつです。
独学で歌の練習をしている人は「自分の耳”を」一の判断基準にします。
しかし、すでにしゃくり癖がついている場合、この耳は正常にピッチを判断できません。誤った音の当たり方を「正解」と学習してしまい、練習すればするほどクセが深まっていくのです。努力が成果につながらないどころか、逆に悪化させてしまう典型例です。
私は先日の歌手オーディションにて、独学で10年以上歌ってきた男性を録音しました。ライブでは「味がある」と褒められることが多かったそうですが、録音してみると、ほぼ全フレーズにしゃくりが入り、ピッチもリズムも揺れていました。本人は「自分は表現力がある」と信じていましたが、実際には「表現に逃げ、基礎を避けてきた10年」だったのです。
独学の最大の問題は、「間違いに気付く手段がないこと」!
どれだけ練習しても、誤った感覚を正す外部の耳がいなければ、改善は不可能です。
これは歌だけでなく、ダンスやスポーツにも共通する原理ですが、歌はとくに耳の錯覚が起きやすいため、問題が深刻化しやすいのです。
さらに、独学で染みついたしゃくり癖を取り除くには、しばしば数年単位の矯正が必要です。そして矯正期間中、自分の良さまで薄まってしまい、「歌うのがつまらなくなった」と離れていく人を私は何人も見てきました。
しゃくり癖は、努力不足ではなく「努力の方向違い」で悪化します。 正しい軌道修正には、必ず専門家の耳が必要なのです。
しゃくり癖を外すための実践メソッド

しゃくり癖は、音程や表現の問題に見えますが、実際には「発声の瞬発力」「ピッチの捉え方」「体の使い方」が複雑に絡んだ総合的な症状です。単なる“癖直し”ではなく、体と耳の両方を再教育していくプロセスが必要になります。
ここでは、現場で実際に成果の出ている方法をもとに、しゃくり癖を根本から取り除くためのトレーニングと考え方を、実践的に整理していきます。
瞬発力を呼び覚ます「しゃっくり活用法」
しゃくり癖を直すには、まず発声の“瞬間”を鍛える必要があります。音を一発で当てるには、声帯と呼吸の立ち上がりが同時に動く瞬発的な反応が不可欠です。
しかし、しゃくり癖がある人は、この立ち上がりが弱く、音が曖昧に始まってしまいます。そこで効果を発揮するのが、少しユニークな「しゃっくり活用法」です。
しゃっくりをするとき、人は無意識に腹圧を瞬間的に高め、横隔膜がピクッと動きます。この動きは、歌唱に必要な“瞬間的な息の押し出し”と非常に近いものです。発声トレーナーの中には、このしゃっくりの動きを応用して、発声の立ち上がりを鍛えるメソッドを用いている方もいます。
練習ステップは次の通りです。
- しゃっくりの感覚を意識し、腹部が瞬間的に動くポイントを感じる。
- その感覚を使い「ハッ、ハッ、ハッ」と短く声を出す。
- 音程を狙うのではなく、“瞬間的に息と声帯を同時に動かす”感覚を身体に教育する。
この練習の効果は、「腹圧の瞬間的な発動」「声帯の素早い閉鎖」「咽頭の安定」「無駄な力みの排除」に直結し、しゃくり癖の根本である「立ち上がりの遅れ」を改善します。
実際、私が担当したあるシンガーは、しゃっくりの感覚を使った練習を取り入れたところ、わずか2〜3週間でアタックの精度が大幅に向上しました。「歌い出しがはっきりした」と自分でも驚いていましたが、それは正しい瞬発力を体が理解できた証拠です。
しゃくり癖を直すには、まず迷わず声を出す身体を作ることが先決です。 しゃっくりの動きは、その最短ルートと言えます。
ピッチを点で捉える耳と喉を作る
しゃくり癖を持つ人の歌い出しを波形で見ると、例外なく音の立ち上がりが“くねっ”と曲がっています。これは、声が滑り始めの段階で音を探しているために起こる現象です。
このクセを外すためには、音程を「点」で捉える感覚を身につける必要があります。そのために非常に効果的なのがスタッカート練習です。
スタッカートとは、音を短く切って発声する方法ですが、ここで重要なのは「短くすること」ではなく、音の瞬間に正確に着地する感覚を育てることです。
練習手順はシンプル。
- 鍵盤の単音を鳴らす
- 「マッ」「マッ」と短く、即着地で音を当てる
- 半音ずつ上げたり、下降させたりしながら精度を高める
この練習によって、声帯が素早く所定の長さに調整され、アタックの揺れが減ります。さらに、息と声帯の協調が整うことで、音を滑らせる必要がなくなり、しゃくりが根本から弱まります。
私の経験上、スタッカート練習を真面目に続けた生徒は、ほぼ例外なくアタックの質が改善します。
特に、録音で「音の入りがはっきりした」「リズムに乗りやすくなった」という変化が顕著に現れます。これは、音程を「線で探す」のではなく、「点に着地させる」感覚を体と耳が学習した結果です。
もうひとつ重要なのは、スタッカート練習が喉の余計な力みを浮き彫りにする点です。短い音では、力みがあると即座にピッチがズレます。
つまり、自分の弱点が明確に分かるのです。このフィードバックが、しゃくり改善の大きな助けになります。
しゃくり癖の克服は、音を「点で捉える」訓練から始まります。 スタッカートは、最も正直で、最も効果的な矯正法なのです。
SOVTE・録音チェック・ポルタメントの併用
しゃくり癖を根本的に改善するには、瞬発力だけでなく、日常の発声そのものを整える必要があります。
そこで役立つのが、【SOVTE】【録音チェック】【ポルタメント練習】の三つです。これらは単体でも効果がありますが、組み合わせることで“安定した土台”が形成され、しゃくりを防ぐ身体が育っていきます。
1.SOVTE(半閉鎖声道法)
ストロー発声やリップロールは、息と声帯のバランスを自然に整え、喉の押しつけを弱めます。しゃくり癖がある人は、発声時に過剰な力みがあるため、SOVTEはその力みを“ゼロ地点”に戻す効果があります。
特に、ストローブローで音階をゆっくり動かす練習は、声帯の長さがスムーズに変化する感覚を育て、音の入りが整いやすくなります。
2.録音チェック
しゃくり癖が強い人ほど、耳が誤った判断をしているため、録音を客観視する習慣が極めて重要です。原曲やピアノと照らし合わせながら、下記をを確認します。
- 立ち上がりが遅れていないか
- 呼気のザラつきが出ていないか
- 最初の母音が濁っていないか
自分の声を“外部の耳”で聴く体験は、矯正のスピードに直結します。
3.ポルタメント(滑らかな音移動)
意外に思われるかもしれませんが、ポルタメントはしゃくり改善に非常に効果があります。音を連続して滑らかに動かす練習を繰り返すことで、声帯の変化がスムーズになり、“わざわざ下からすくう必要”がなくなるためです。プロ歌手の録音でも、練習段階でポルタメントを多用して、音の“移動の癖”を整えているケースが非常に多いです。
この三つは、即効性と持続性の両方に優れています。
しゃくり癖の改善に近道はありませんが、正しい方法を積み重ねれば確実に変わります。
ここではテキストでメソッド解説していますが、読んで自主練で体得できるものではありません。
必ず歌手志望者専門のボイストレーニングを受けてください。
Q&A
- しゃくり癖は、どれくらいの期間で改善できますか?
- 改善のスピードは個人差がありますが、早い方で半年、強い癖が根づいている場合は数年かかることもあります。大切なのは「癖を削る段階」と「正しい基礎を再構築する段階」を同時に行うことです。録音チェックとトレーナーのフィードバックを併用すれば、改善は確実に前進します。
- カラオケでは上手く聴こえるのに、録音すると下手に感じるのはなぜですか?
- カラオケやライブ空間では残響(リバーブ)が多く、音程の揺れやアタックの曖昧さが“美化”されます。しゃくり特有の滑りも自然な表現に感じられます。しかし、レコーディングでは残響が少なく、生の声がそのまま露出するため、音の立ち上がりが鮮明に判断され、癖が目立ってしまうのです。
- 独学でも治せますか?
- 結論として、独学だけで完全に矯正するのは難しいです。理由は、しゃくり癖の耳が「間違いを正解だと学習している」ため、客観的な判断ができないからです。外部の耳(トレーナー)と録音チェックを併用しなければ、改善が遅れます。正しいメソッドに早く触れるほど、矯正は短期間で済みます。
- しゃくり癖は“表現”ではなく、発声の遅れと音程認識の曖昧さが生む“構造的な問題”である。
- 一発で音に当てる“アタック精度”と、耳と身体を結びつける基礎トレーニングがマスト。
しゃくり癖は、歌の印象を大きく左右するだけでなく、あなた自身の歌の未来を変えてしまうほどの影響を持っています。レコーディングの現場で私は何度も、しゃくりを無自覚に続けたがゆえに大きな挫折を味わった人たちを見てきました。
しかし、その一方で、正しい基礎を身につけたことで驚くほど伸びていく人もいます。歌は「センスの世界」に見えて、実は「再現性の世界」です。
適切なメソッドを積み重ねれば、誰でも「ジャストで音に当てる発声」は習得できます。
だからこそ、しゃくり癖に気付いた今が重要なターニングポイントになります。
癖を手放すことで、あなたの声はもっと透明に、もっと伸びやかに変わっていきます。そして、その変化は歌う喜びを取り戻し、あなたの表現を次のステージへ引き上げるきっかけになるでしょう。
歌と真剣に向きあう覚悟があるなら、ミュージックバンカーの歌手オーディションに来ください。
“しゃくり”をはじめとした歌の癖を的確に指摘し、解決できる環境を与えながら経過を見ていきます。
