本記事は、【芸能界】「夢食いビジネスに騙されるな」という「すり替えビジネス」に騙されるな のアンサーコラムです。先にそちらをお読みください。

エキストラを芸能人枠に括るとおかしなことになる

タレントの収入のイメージ

T氏T氏

多くのタレントは十分な収入を得られていない

T氏はこう主張しますが、ちょっと待ってください。

タレントって、誰を定義しての話でしょうか?

TVによく出ている人?タレント名鑑に乗っている人?
俳優、歌手、お笑い芸人、モデル、アイドル、声優、司会者などジャンルはたくさんありますが、まさか「エキストラ」も含む?

まあおそらく、T氏はご自身がかつてやっていたエキストラを指して、タレントと定義づけているのでしょう。
タレントという国家資格がない以上、名乗ろうと思えばだれでもタレントです。「エキストラはタレントではない」とは言いません。

しかしタレント収入に関して、エキストラを一般的なイメージでいうところの「芸能人枠」に括って議論するのは、あまりに焦点がぼやけ過ぎているでしょう。

エキストラとメインキャストでは、性質も存在意義も当然ギャラ水準も、全く同じ土俵ではない。TB社のように、エキストラ志望者に対してタレント収入を期待させるのは、罪中の罪です。

弊社もシニア世代に特化したシニアタレント部門というセクションを運営していますが、「今からタレントとして売れたい、金持ちになりたい」という人は来ないでください」とハッキリ最初に告げています。

本記事を読むべき人
  • エキストラから本格的な芸能活動へのステップアップを夢見ている人
  • 「分配率」や「チャンスの平等」にこだわる新人タレント

エキストラの収入を上げるのは物理的に無理

成功したタレント

結論。タレントを管理している事務所自身がどう頑張っても、エキストラの収入をあげるなんて物理的に無理なのです。
なぜなら、タレントの報酬は制作側が決めることだから。絶対値は、はじめから決まっているのです。

T氏も発言しているように、エキストラ報酬は、提示金額が4,000円とか8,000円とかそんなものです。
一般的な予算から逆算して想像すれば、それでもギリギリだと思います。「このワンシーンのために、誰でも良いから通行人役を100名集めて」というミッションの中、通行人一人に5万円も出して成立するわけがない。

もちろんエキストラ仕事の中には、何万、何十万という報酬案件もあります。ただなぜ報酬が高いのかといえば、必要としている人を選ぶ案件だから。
たとえば「30代男性で禿げてて、1か月毛生え薬を使用していただき、経過を自宅撮影させてくれる人」とか。
まあ選ぶベクトルが違う、といったほうが正しいかもしれません。

少なくとも「来年公開のNetflixの新ドラマで、主人公の恋人役」なんて案件はエキストラにはない、と断言しておきます。

分配率の罠と中抜きの実

エキストラタレントの手取りを上げるためには、事務所が本人に対して分配する金額を引き上げれば、解決するのでしょうか?(まあ、やれることなんて、それ以外ありませんが)

T氏は、「タレントたちに8割を分配してい」ると言いますが、分配率にごまかされてはなりません

4,000円。

事務所は半分の2,000円を持っていくなんて搾取だ

なんて小学生の会話です。

8割タレントに分配したところで、2,000円が3,200円になるだけで、「上カルビ」一皿の注文が「特上カルビ」になるに過ぎない。「多くのタレントは十分な収入を得られていない」の解決になってないのです。
たとえ案件数が10倍の土俵で考えたとて、結論は同じ。

「この事務所には半分持っていかれる、この事務所は80%を分配してくれる、吉本興行は1割しかもらえないと聞いたことがある」と分配率をあれこれ気にする人をよく見かけますが、冷静になってくださいね。そんなことはどうでもいい話です。

分配率が気になる人の思考ロジック

  1. 本来、案件報酬は自分に100%発生している

  2. そこから事務所に何パーセント引かれている

また下記のようにT氏は言いますし、タレント側からよく聞くフレーズでもあります。

T氏T氏

芸能界には中抜きをする業者が多く…

まったくわかっていませんねぇ…

根本的な勘違い

ビジネスの土俵はあくまで事務所側です。

タレントは「現場から」ではなく、「事務所から」オファーを受けているのです。

タレントと芸能事務所の契約は、一般的に業務委託契約の形態を取っており、例えば専属マネジメント契約は、法的には「準委任契約」に該当します。タレントは個人事業主であり、法的な定義で言うとことの労働者(従業員)ではありません。

よって、分配率が80%だろうが20%だろうが、もらえる報酬が10万円なら、5万円なら、はたまた2千円であっても、「その報酬額で案件に取り組む」かどうか、が本質なのです。

仕事の受任可否に関しても、やはり選択はタレント側にあることをお忘れなく。

事務所だってエキストラ報酬で飯を食っているわけではない

エキストラ案件が前提の話ですが、事務所側の立場に想像を膨らませてみましょう。

4,000円の出演料から50%を徴収したところで、2,000円の売上です。これを経理処理するのに、請求書を起こし、報酬計算(税金含む)をし、分配処理をし、それをまた記帳する。
そしてこれは「雀の涙ほどでも売り上げが立った場合」の話で、それ以前に案件情報を整理し、タレントにオファーし、クライアントに宣材資料を渡し、合否が決まるまで前日深夜まで待機し、タレントたちに伝達する。落選したら、ただの無駄骨。

やってられねぇわ

2,000円のために、これだけの管理と実務の工数がかかることを考えると。このため息は、タレント側ではなく、事務所側の本音ではないでしょうか。
タレント一人の機会創出のために、人件費などのリソースを経営観点から考えると、圧倒的に赤字なのです。

エキストラ案件の場合、なんならタレントに100%分配だってよい。それが20%だろうが80%だろうが、誤差のうちです。
いずれにせよエキストラ報酬の売上など、まともな芸能事務所であれば月商のうち1割にも満たない構成比率なのが普通だから。

要するに、事務所にとってエキストラのマネジメントは、芸能の仕事の中でも案件報酬を稼ぐものではありません。「タレントたちに対して機会提供」というタレントたちに対してのサービス業なのです

だから、登録料だとか、レッスン費だとか、会費だとか、徴収するのは当たり前なのです。

それが気に食わないなら、お願いだからタレント志望など辞めていただきたい!

そしてタレント報酬を80%と標榜しているTB社自身も入会金、会費、違約金を設定していることに本音と本質が見え隠れしているわけですね。

それでも、まともな芸能事務所が「エキストラタレントを取りまとめる業務」を続けるのは、収益以外に目的があるから。
事務所としての稼働感なのか、はたまた純粋にタレント志望者を応援したいからなのか。
それを搾取だ、なんて言われたら堪ったもんじゃないでしょう。

世の中の対価はすべて価値(バリュー)で決まる

制作サイドなど、タレント起用側の立場からすれば、「なぜこちらがコストかけてリスクを取って、わざわざ使う理由がない人を起用しなきゃならないの?」と思うでしょう。
タレントの起用は全て起用する側マターであり、起用されたいタレント側に主導権などない、と断言します。

起用されたいなら、きちんと勉強し実力を蓄えることはもちろん、活動を通じて知名度を上げ、売れてファンがついて、スポンサーに起用されたいと思われて、がチャンスを掴めるスタートラインと認識してください。

平等にチャンスを、なんて甘言に騙されるな

T氏T氏

多くの芸能タレント(99%)が、芸能活動だけでは生計を立てられていないという課題がある

T氏はこう主張しますが、それは99%の人にタレントとしての価値(バリュー)が認められていないからです。
「誰もが稼げる芸能界?」「どこもかしこも、タレントは価値で満ち溢れている?」
そんなものが実現するなら、世の中の構造自体が壊れてしまいます。「1%しかニーズがないから」価値が生じる、これは物理法則なのです。

また、こうも発言しています。

T氏T氏

芸能界を目指す全ての人に平等なチャンスが与えられるべきだ

物理的に無理過ぎてバカバカしいですね。「定員10名の脱出ボートに5000人の乗客を乗せます、いや乗せるべきだ」と言っているように聴こえます。そのうち100分の一に平等な入船審査をしているうちに、みんな逃げ遅れて死んでしまいます。

エキストラとメインキャストでは発生対価の構造から違う

冒頭に言及していますが、芸能業界においてエキストラとメインキャストの対価構造は根本的に異なります。この違いを理解せずに同じ土俵で語ることが、タレント志望者の誤解を生む原因となっています。

エキストラの価値は「その場に存在する人数の一部」という点にあります。通行人や群衆といった背景を形成するために必要とされるため、個人の特性よりも「数」として求められます。
そのため報酬も低く設定されるのは必然。制作側からすれば、「誰でもいい」という代替可能性の高さが対価に直結しているのです。

T氏T氏

芸能界には仕事の案件自体は不足しておらず、むしろ人手が足りないくらいだ

あのね…

芸能界=エキストラと定義するならば、そりゃそうだろう

制作現場は、常に血眼になって人を探しています。エキストラは報酬も低く、拘束時間は長い、多くの人が敬遠する仕事なんですから、やりたい人なんてそうそう見つからないのです。

一方、メインキャストの価値は「その人でなければならない」という唯一無二性にあります。視聴者を惹きつける演技力や表現力、知名度やファン層の厚さといった「個人の資産」が評価され、それに応じた対価が発生します。
ここには単なる労働対価ではなく、その人物がもたらす経済効果に対する期待値も含まれています。

エキストラとメインキャストの違い

エキストラ 代替可能性 報酬安い
メインキャスト 唯一無二性 報酬高い

エキストラからメインキャストへのステップアップは、単に経験を積むだけでは達成できません。両者の間には「価値の発生構造」という深い溝があります。
エキストラは「時間と存在の対価」であるのに対し、メインキャストは「才能と影響力の対価」なのです。

この構造的差異を理解せず、エキストラの延長線上にメインキャストの収入があると考えることが、多くのタレント志望者の幻想を生み出しています。事務所が何度エキストラ案件を紹介しても、それだけでは「十分な収入」には到底たどり着けません。

タレント志望者は、「平等なチャンス」という甘い言葉に惑わされず、業界の現実と自らの現状における存在価値を直視する必要があります。
エキストラからメインキャストへの道は、単なる量的変化ではなく質的変化を要求されるもの。その転換点に立つためには、自分自身の現在地を正確に把握し、本当に必要な努力の方向性を見極めることが不可欠です。

芸能界というビジネスにおいて、最終的にはすべてが「価値」に帰結します。その価値創出のメカニズムがエキストラとメインキャストでは根本的に異なることを理解せずに、単に「分配率」や「チャンスの平等」といった表層的な議論に終始しても、問題の本質は見えてきません。
収入格差の根本には、市場から求められる価値の差があるのです。

今回のまとめ
  • エキストラとメインキャストでは対価の発生構造が根本的に異なる
  • 芸能界における報酬は「価値(バリュー)」で決まる

エキストラの価値は「その場に存在する人数の一部」として「誰でもいい」という代替可能性にあり、低報酬は必然。一方、メインキャストの価値は「その人でなければならない」という唯一無二性に基づき、才能と影響力に対して高い対価が発生します。

結局のところ、芸能界の収入格差は市場から求められる「価値」の差によるもの、これが本質です。

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