YouTubeだけが正解ではない。経営者の「声」をブランド資産に

YouTubeと企業Podcastの制作工程と続けやすさの比較

いま、経営者に求められているのは、会社や商品のブランディングだけではありません。経営者自身が何を考え、どんな価値観で会社を動かしているのか。そこまで含めて発信する「経営者ブランディング」が、採用、営業、企業への信頼を左右する時代になりました。

ここ数年、YouTubeを中心に、強い発信力を持つインフルエンサー経営者が次々と登場しています。

「自分も動画を始めなければ」と焦った方もいるでしょう。

けれど、YouTubeは本気で取り組むほど大がかりです。企画、台本、撮影、照明、編集、サムネイル制作。ずしりと積み上がる作業とコストに耐えきれず、更新が止まってしまう経営者を、私は何人も見てきました。

そこで注目したいのが、企業Podcast(企業ポッドキャスト)です。

音声なら、経営者はカメラ映りを気にせず「話すこと」に集中できます。更新頻度を上げやすく、すでに運用しているSNSとも連携しやすい。声の抑揚や間、笑い方まで含めて、その人の温度が伝わります。

私は東京・笹塚のスタジオで数多くのFMラジオ番組を制作するなかで、整えられた文章より、マイクの前でふとこぼれた一言の方が人の心を動かす場面を何度も経験してきました。

  1. Podcastで音声発信のエンジンをかけ
  2. その先にFMラジオという公共の電波へ進む。

そんな段階的なメディア戦略が、これからの経営者ブランディングには有効だと考えています。

ミュージックバンカー代表:水谷 智明
株式会社ミュージックバンカー代表・水谷智明
株式会社ミュージックバンカー代表取締役。「エンタテインメントを通じて自己実現を推進する」をテーマにプロダクションを経営。前職はBEING GROUPにて、DJ ME-YA名義でサウンドプロデュースを担当。長年の業界から集積してきた幅広い知見で、独自の切り口から芸能マネジメント論を展開する。
本記事を読むべき人
  • 経営者自身の発信力を高めたいものの、YouTubeやSNSを継続する負担に悩んでいる方
  • 採用、企業文化、顧客との信頼形成に活用できる自社メディアを持ちたい企業

届かない焦り――企業が「広告」ではなく自社メディアを持つ意味

1回のPodcast収録をWeb記事やSNS、動画へ二次利用する流れ

企業は、広告を出せば知られる時代から、「誰が、どんな考えで経営している会社なのか」まで見られる時代へ入りました。商品やサービスだけを紹介しても、企業の違いは伝わりません。経営者自身の言葉を継続的に届け、それを会社の資産として蓄積する自社メディアが必要なのです。

経営者は、自分自身もブランド化すべき時代

顧客や採用候補者は、会社名や商品だけを見ているわけではありません。「誰が経営しているのか」「どんな価値観を持つ人なのか」「問題が起きたとき、どう判断するのか」。そこまで調べて、商品を買うか、応募するか、取引するかを決めています。会社のブランドと経営者のブランドを、完全に切り離すことが難しくなったのです。

とはいえ、すべての社長が派手な言動で注目を集める必要はありません。再生回数を競い、炎上覚悟で名前を売ることだけが経営者ブランディングではないからです。

本当に必要なのは、有名になることではなく、何のために会社を経営し、顧客に何を約束し、社員にどんな未来を見せたいのかを伝えること。商品や価格は似せられても、経営者が積み重ねてきた経験や判断基準まではコピーできません。

会社案内の片隅に一度だけ掲載された代表挨拶では足りないでしょう。社会や事業の変化に合わせて、いま何を考えているのかを届け続ける。そこから経営者への信頼が生まれ、企業全体のブランドへつながっていきます。

YouTubeは強力だが、継続するには少々重い

YouTubeには、表情、商品、施設、会社の雰囲気まで視覚的に見せられる強みがあります。うまく運用できれば、非常に強力な企業メディアになるでしょう。

問題は、続けるところまで含めると想像以上に重たいことです。

10分から15分程度の動画を1本公開するモデルで考えてみます。

取得方法
一般的な制作工程の所要時間を積算
計算式
企画・構成2時間+撮影2時間+編集8時間+サムネイル・公開2時間
結果
合計14時間

外部へ委託すれば費用が上がり、内製すれば社員の時間が削られます。さらに、撮影場所、服装、表情、カメラの前で話す心理的負担もある。再生回数が期待ほど伸びず、担当者も忙しくなり、やがてチャンネルだけが静かに残る。私の周囲でも珍しくない光景です。

YouTubeが悪いのではありません。ただ、経営者ブランディングの第一歩なら、「最も華やかな媒体」より「無理なく続けられる媒体」を選ぶ方が現実的です。

メディアは、始めた瞬間より、半年後にも更新されていることの方が重要!

広告枠ではなく、言葉が蓄積する場所を持つ

広告には即効性があります。新商品を知らせる、イベントへ集客する、問い合わせを増やす。目的と期間が明確なら、今も有効な手段です。ただし、出稿を止めれば露出も止まり、そこで語った言葉が企業の資産として残るとは限りません。

自社メディアは、過去の発信がアーカイブとして積み上がります。半年後に会社を知った人も、さかのぼって聴ける。採用候補者や取引先が、経営者の考え方を知る材料にもなるでしょう。

Podcastは外部プラットフォームでも配信されるため、配信場所そのものを企業が所有するわけではありません。それでも、企画、音源、出演者、語られた内容、番組の世界観は自社側に蓄積できます。

一度の収録は、複数のコンテンツへ展開できます。

音声を文字に起こしてWeb記事にする。印象的な一言をSNSで紹介する。収録風景をYouTubeやショート動画に展開する。

制作物
Podcast1本、記事1本、短尺動画3本、SNS投稿5本
計算式
1+1+3+5
結果
1回の収録から合計10点の発信素材

SNSは情報を広げる場所。Podcastは、経営者の考えをじっくり聴いてもらう場所。

両者を連携させれば、毎回ゼロからネタを考える負担も減らせます。

広告を出すことが、誰かの場所を一時的に借りることだとすれば、自分たちの番組を持つことは、経営者の言葉が積み上がる場所を育てること。

これが企業Podcastをオウンドメディアとして考える理由です。

声が生む信頼――経営者Podcastが人柄と企業文化を伝える

経営者の声が信頼、企業文化、共感へつながる仕組み

経営者が発信すべきものは、完成された経営理念だけではありません。迷った末に何を選び、失敗から何を学んだのか。その背景にある人柄や価値観まで伝わってこそ、言葉は信頼へ変わります

経営者Podcastでしか伝わらない「声の情報」

企業サイトの代表挨拶には、「社会への貢献」「お客様第一」「新しい価値の創造」といった立派な言葉が並びます。けれど、似た表現が増えるほど、企業ごとの違いは薄れてしまう。誰が語っても成立する言葉だけでは、経営者の輪郭が見えません。

声には、話す速さ、息継ぎ、抑揚、言葉に詰まったときの間、少し照れた笑いまで含まれます。私は番組制作の現場で、台本へ情報を詰め込みすぎた結果、出演者のよさを消してしまったことがあります。間違えないことを優先し、パンフレットを耳元で読み上げるような番組になってしまったのです。

その経験から学んだのは、音声番組に必要なのは完璧な原稿ではなく、「その人の言葉が出てくる余白」だということでした。

「なぜ、その事業を始めたのですか」
「一番苦しかったとき、何を考えていましたか」

聞き手が問いを投げると、用意された挨拶文の奥にある本音が出てきます。うまく話すことより、自分の言葉で誠実に答えること。それ自体が経営者の情報発信であり、企業の輪郭をはっきりさせるブランディングになるのです。

採用ブランディングと企業文化を見える化する

採用ページには、給与、勤務地、勤務時間、福利厚生が並びます。しかし、応募者が本当に知りたいのは、募集要項だけでは見えない職場の温度ではないでしょうか。

どんな価値観を持つ経営者なのか。失敗した社員にどう向き合うのか。新しい提案を歓迎する会社なのか。こうした企業文化を伝える場としても、企業Podcastは機能します。

社長と若手社員が「入社前に不安だったこと」「仕事で最初に失敗したこと」を話す。社員から社長へ「うちの会社の弱点は何ですか」と問いかける。答えにくい質問から逃げず、自分の言葉で語る姿勢そのものが会社の価値観になります。

ただし、社員が会社を褒め続けるだけでは、採用広告の音声版です。よく見せることを優先するほど、実像は遠ざかります。経営者と社員がどんな距離感で話し、意見の違いにどう向き合うのか。企業文化は、その日常に表れるものです。

番組は社外向けだけではありません。出演した社員が仕事を言葉にし、経営者の発信を社員が聴くことで、自社の価値を再確認できます。採用ブランディングと社内への理念共有を同時に進められることも、音声メディアの強みでしょう。

売り込まない発信が、見込み客をファンへ変える

企業が番組を始めると、商品やサービスを詳しく説明したくなります。けれど、最初から最後まで商品の話が続けば、リスナーには長い広告にしか聞こえません。

先に考えるべきなのは、「何を売るか」ではなく「なぜ、この番組を聴き続けてもらえるのか」です。

住宅会社なら、物件を売り込む前に、後悔しない家選びを語れる。税理士なら、契約を求める前に、経営者が陥りやすい資金繰りの失敗を話せます。その専門知識のなかに、経営者自身の経験や判断がにじむ。ここが重要です。

Podcastでは、同じ声が通勤中や運転中、家事の時間に繰り返し生活へ入ってきます。「この人の考え方は信頼できる」「必要になったら相談したい」。売り込まなくても思い出してもらえる関係が、少しずつ育っていくのです。

取引先、顧客、社員、地域で活動する人をゲストに招けば、番組は社長一人の発信場所から、人がつながるメディアへ成長します。経営者の声を起点に関係を編み直していくこと。それが企業Podcastによるファンマーケティングの土台になります。

選択のリアル――企業PodcastからFMラジオへ

経営者の情報発信を企業PodcastからFMラジオへ発展させるロードマップ

PodcastとFMラジオは、どちらか一方を選んで終わるものではありません。まずPodcastで無理なく発信を始め、番組の型とリスナーを育てる。エンジンがかかったところで、FMラジオという公共の電波へ進む。音声メディアは段階を踏んで成長させられます

PodcastとFMラジオは、どちらが優れているのか

結論から言えば、優劣ではなく役割の違いです。

比較項目 企業Podcast FMラジオ番組
配信 好きな時間に聴ける 放送局が定めた日時に放送
始めやすさ 比較的始めやすい 放送枠や局との調整が必要
主な強み 専門性や思想の蓄積 公共の電波による認知と信用
接点 SNS、検索、既存顧客 放送局の聴取者、地域
適した段階 音声発信の立ち上げ ブランドを広げる段階

Podcastは経営者の声を継続的に蓄積でき、FMラジオはその声を自社のフォロワー以外へ届けられます。FMで放送した内容をPodcastでも配信すれば、放送時間に聴けなかった人へ後から届けることも可能です。

選択肢は、Podcastだけで運用する、最初からFMラジオ番組を持つ、Podcastで育ててからFMへ進む。この三つ。私は特に、三つ目のルートに大きな可能性を感じています。

忙しい経営者には「番組を続ける仕組み」が必要

企業PodcastはYouTubeより身軽ですが、録音ボタンを押せば自然に続くわけではありません。テーマ選定、構成、収録、編集、配信、SNS告知を社長がすべて抱えれば、いずれ本業に押し戻されます。

更新が止まる原因は、話題がなくなることより、毎回の判断が多すぎることです。そこで、経営者の失敗談、社員との対談、顧客や取引先を招く回、業界への見解など、番組の柱を先に決めておきます

収録も毎週行う必要はありません。

1回の収録で2本を制作し、月2回収録すれば、計算式は2本×2回。月4本の更新素材ができます。頻度は一例ですが、まとめ録りによって経営者の拘束時間を圧縮できます。

経営者が担うのは、自分の経験と考えを話すこと。企画整理、聞き手、台本、収録、編集、配信は、社内担当者や外部制作チームへ任せられます。外部化する意味は音を整えることだけではありません。本人が価値に気づいていない経験を掘り出し、継続できる番組へ変えることにあります。

Podcastでエンジンをかけ、公共の電波へ進む

企業Podcastを続けると、反応のよいテーマ、社長に合う話し方、ゲスト回の効果など、その会社らしい番組の型が見えてきます。ここまで来れば、次の一手としてFMラジオが視野に入ります。

Podcastで話すことに慣れ、番組企画を磨き、SNSとの連携方法をつくる。そのうえでFMへ進めば、蓄積した経験を放送へ持ち込めます。

「Podcastを配信する会社」から「FMラジオに自社番組を持つ会社」へ。番組名、放送局、放送日時を会社案内や採用ページ、営業資料に記載できることも、経営者と企業のブランディングを一段引き上げるでしょう。いわば、PodcastからFMラジオへの“昇格”です。

ただし、放送枠を確保するだけでは意味がありません。宣伝一色ではリスナーが離れるため、番組制作会社には、録音技術だけではない力が求められます。

ラジオ番組制作会社を選ぶ際は、次の項目を確認してください。

  • 経営目的から番組を設計する力
  • 経営者の言葉を引き出す力
  • PodcastとFM双方の知識
  • 放送後の二次利用と継続運用
  • 著作権や放送基準への対応

ラジオ番組の費用も、放送局、番組時間、収録回数、編集、Podcast配信などで変わります。総額だけでなく、企画から放送まで何が含まれるかを確認すべきです。

PodcastやFMラジオ番組を作りたい方へ

FMラジオパーソナリティー

弊社ミュージックバンカーは、FMラジオ番組の制作本数で日本一の実績を誇るプロダクションです。日常的に番組の企画、構成、収録、編集、放送進行へ携わっている私たちにとって、Podcast制作は、正直に申し上げれば「お手のもの」。制作費はたったの1万円からです!

けれど、音声ファイルを作って配信するだけでは終わらせません。経営者の経験や思想を番組に変え、SNSと連携させながら育てる。エンジンがかかったら、FMラジオという公共の電波へ進む。その道筋まで含めて支援することが、私たちの役割だと考えています。

Q&A

企業Podcastは、どのくらいの頻度で配信すべきですか?
毎週が正解とは限りません。月1回でも、目的とテーマを定めて継続する方が価値は蓄積します。経営者の予定と制作体制を踏まえ、無理なく続けられる頻度から設計しましょう。
PodcastとFMラジオは、どちらから始めるべきですか?
まず番組の型を育てたいならPodcast、地域での認知や公共の電波で放送する信用を重視するならFMが候補です。Podcastから始め、後にFMへ進む方法もあります。
ラジオ番組の制作には、どのくらいの費用がかかりますか?
費用は放送局、放送枠、番組時間、収録回数、編集、Podcast配信などで変わります。金額だけでなく、企画から放送まで何が含まれるのかを制作会社へ確認してください。
今回のまとめ
  • 経営者の声は、人柄や企業文化を伝え、継続するほど会社に蓄積されるブランド資産になる。
  • Podcastはゴールではない。番組を育てた先には、FMラジオという公共の電波へ進む選択肢が有効。

経営者の声を、会社の未来に残るメディアへ

経営者が情報発信する目的は、インフルエンサーになり、一時的な注目を集めることではありません。

なぜ、この事業を始めたのか。何を守り、どんな未来をつくろうとしているのか。その考えを自分の言葉で届けることが、経営者ブランディングの本質です。

YouTubeには映像の強さがあり、ブログは検索に強く、SNSには拡散力があります。どれも優れた媒体です。ただ、忙しい経営者が無理なく発信を続け、人柄や温度まで届ける手段として、音声はもっと選ばれてよいと思います。

  1. まずPodcastで声を届ける習慣をつくる。

  2. SNSと連携しながら番組を育て、社員、顧客、取引先との関係を深める。

  3. やがてエンジンがかかったら、FMラジオという公共の電波へ進む。

  4. クロスメディア戦略の要とする。

発信する場所を借り続けるだけでなく、自分たちのメディアを持つ。社長の声を、その場限りの言葉で終わらせず、会社の未来へ残るブランド資産に変えてみませんか。

ミュージックバンカーは、企業Podcastの立ち上げからFMラジオ番組への展開まで、その道筋を番組制作の現場から支えていきます。

企業・経営者ブランディングをお考えの方は、是非ご相談ください

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