つだつみ木 | ナレーターインタビュー
ナレーターオーディション応募者の声

「“読む”を研究し、“声”で届ける」の表現”の奥深さ
古澤:まず、つださんがミュージックバンカーのナレーターオーディションを受けたきっかけを教えていただけますか?
つだ:「オーディオブックのナレーターになるにはどうしたらいいか」と調べていた時に、ミュージックバンカーが 「オーディオブックナレーターオーディション」 という名称で募集しているのを見つけたのがきっかけです。それで、すぐに申し込みました。
古澤:数あるナレーションの仕事の中でも、特に「オーディオブックナレーター」にこだわっている理由は何でしょうか?
つだ:もともと小さい頃から原稿を読むのが好きで、小学校からずっと放送委員を務めていました。当時は人見知りで、誰かに見られている状況が苦手だったので、人前に立つのではなく、放送室のマイクの前が、自分を伸び伸びと表現できる特別な場所だったんです。

朗読が大学の研究対象に
古澤:なるほど、マイクの前が原点だったのですね。
つだ:はい。その経験から、大学では自分の好きな「朗読」を研究対象にしようと考えました。ちょうどその頃、Amazon AudibleのCMなどでオーディオブックが注目され始めていて、「朗読」という少しマニアックだった領域が、多くの人の耳に届くようになってきたことに強く興味を惹かれたんです。それで、大学院まで朗読やオーディオブックを研究対象としてきました。
古澤:研究者ならではの視点ですね。津田さんが理想とするオーディオブックのナレーションはありますか?
つだ:リスナーの好みは、キャラクターごとにしっかり演じ分けるエンタメ性の高いものから、解釈の余地を残した淡々としたものまで様々だと思います。 私が特に惹かれるのは、その中間にあるナレーションです。一見すると淡々と自然に聞こえるのに、実は非常に高度な技術が反映されている。そういった、聞き手の想像力を邪魔しないながらも、物語の世界に深く引き込むような「熟練の読み」に憧れますし、自分もそうした表現ができるようになりたいです。
古澤:実際にミュージックバンカーで小説のコンテンツを収録された際の感想はいかがでしたか?
つだ:オーディオブックの収録で最も大変なのは、やはり「長尺」を読むことだと改めて感じました。何時間も続けて読むための体力と集中力はもちろん、最初から最後まで声の質やトーンを一定に保つことが非常に難しいです。私が最初に担当したサスペンス作品では、複数の登場人物を声だけで演じ分ける必要があり、聴いているだけで誰が話しているか伝わるように表現することに苦心しました。
長時間収録の壁を越える——体力・集中力を支える習慣と工夫
古澤:長時間の収録は本当に大変ですよね。体力や集中力を維持するために、何か工夫されていることはありますか?
つだ:最初の頃は、1時間半もすると喉が痛くなり、集中力も途切れてしまいました。ですが、マンツーマンで指導してくださる先生から、技術だけでなく、効果的な休憩の取り方や、収録中の飲み物・食べ物の選び方といった工夫を教わりました。今は、自分にとってベストなコンディションで長時間読み続けられる方法を模索しながら、トレーニングを重ねています。
古澤:最後に、オーディオブックナレーターを目指している方々へメッセージをお願いします。
つだ:今、AIによる合成音声のコンテンツが急速に増えています。コストや時間を考えると、人間の声の仕事が機械に取って代わられるのではないか、という不安を感じる方も多いと思います。 しかし、そんな時代だからこそ、「ナレーターである自分が読む価値とは何か」を深く考えることが重要だと感じています。原稿の解釈と声による表現のどちらにおいても、真摯に向き合いかつ個性を出せるようにと心がけています。声の文化の未来を一緒に切り拓いていけるよう、お互いに頑張りましょう。つだつみ木(ミュージックバンカー所属ナレーター)
オーディオブックナレーターを目指す
オーディオブックナレーター・つださんは、幼少期の放送委員経験を原点に「読む」ことを探求してきた表現者。大学・大学院で朗読研究に取り組み、理論と実践の両面から“声の表現”を磨いてきた。現在はミュージックバンカー所属ナレーターとして、長時間収録にも耐えうる技術と集中力を養いながら、原稿の解釈と声による表現のどちらにおいても、真摯に向き合いかつ個性を出せるようにと心がけている。
主な活動歴
ナレーション:レセコン一体型電子薬歴「ファーネス クロス ハイブリッド クラウド」,クラウド型シミュレーションツール「SimScale」
音声ガイド:トラベルガイドPokke:「ひだかdeおさんぽ〜馬と自然と文化の旅〜」「奥浅草ガイドマップ〜物語で知る、もうひとつの浅草〜」「宿泊美都」
ラジオ:FM西東京「Future×Link Radio」
youtubeよむの森チャンネル短編小説「鍵は、静かに口を閉じた」
